会長の任期を終えて

産業遺産学会前会長 天野武弘

 2021年6月の総会決議をもって第12代会長を退任いたしました。就任の際に掲げた会員増と学会活動の「見える化」については、大きな前進がなく、今後に引き継ぐ形となりましたが、2018年5月からこの3年間、会員のみなさまから沢山のご指導ご鞭撻を頂きましたこと、先ず以て御礼を申し上げます。また学会活動の縁の下の力持ちとして任を果たして頂いた理事会、監査、事務局の方々にも衷心より御礼を申し上げます。

 さて、この間には、とくに大きな節目となる学会名の改称がありました。名実ともに産業遺産を調査研究する学会として衣替えしましたが、学会創設当時からの学問的精神を変えたものではありません。歴史学の一分野としての産業考古学及び産業遺産の調査研究と保存活動は、当学会の根幹をなすものであり、今後も継続、推進していかなければと考えています。その意味でも会員諸氏の益々の研究進展をご期待するものです。

 もう一つの大きな出来事は、新型コロナの感染拡大でした。当学会において二大行事となる総会と全国大会が、2020年度からオンライン開催となりました。楽しみとしていた見学会や、肌触れ合う会員交流ができず、残念な思いをした方が多かったのではと思います。コロナ禍の早い収束を願うところですが、一方で、オンラインでの発表や会議の有効性を感じた方も多かったのではと思います。とは言っても、やはり学会の研究活動は、「モノをして語らしめる」とあるように、産業遺産に直に触れることを基本としていますので、早い再開を持ち望みたいところです。

 当学会は間もなく創立45周年を迎えます。会員増は喫緊の課題ですが、継続的課題でもあります。私が若いとき、もう40年以上前になりますが、何かしら大きな魅力を感じて入会したことを思い出しています。私も今、一会員として、魅力を感じてもらえる学会とは何かを問いながら、心新たにしているところです。